谷さんの工房にお邪魔しました。

 

お邪魔した日:2012年6月13日

お邪魔した人:飯島正章、狐崎ゆうこ、花塚光弘、前田大作

 

 

 

 


 

谷さんの工房 飯島正章

工房探訪記 谷さん

谷さんは木工歴40年以上。
長い間には様々なものを作られてきたと思う。
谷さんの今までの作品でぼくが見たものはほんのわずかだと思うが、

その中で印象に残っているのは、釿(チョウナ)のハツリ目の残った膳や、

厚板で組んだどっしりとした椅子、タイやミャンマーの物を参考にしたという卓子など。
どの作品も落ち着いていて強い存在感がある。

谷さんの工房は街中からは少し離れているが、山奥にポツリとあるわけではない。
近くには思ったより人家が多かった。
工房は横長の建物で、正面から見て右端から材料庫、機械場、手加工場、搬出口となっていて

各々仕切られている。
右から入れた材料が左から製品になって出てくるという無駄のない流れだ。

工房には若い男性のお弟子さんが2人いらした。
お弟子さんは4年の年季で2.年差でのリレー方式。
仕事を覚えた先輩が後輩に引き継いで独立していく。
こちらも無駄のない流れ。先のことまで考えてちゃんと準備している。

木工は松本民藝家具で修業されたとのことだが、

単に技術だけでなくそういう考え方も身につけられたのだろうか。

手加工場には立式の作業台がいくつか並んでいて、一番奥が谷さんの場所だ。
壁には多くの鉋やのこぎり、槌類、スケールやクランプなどが掛けてある。
まさに木工家の仕事場といった感じがする。
道具は必要に応じて購入したもので趣味で集めたものはないそうだ。

その中で一番良く使うという鉋を見せてくださった。
銘は「寿一」。名工碓氷健吾氏の手によるものだ。
ずいぶん使い込んでいてかなり刃が減っている。
そのため台頭から刃の部分までの上面を1㎝程度削って薄くし、

刃の抜き差しをやりやすくしている。なかなか大胆な形だ。
谷さんにとってはごく普通のやり方だったのか、

はじめて見たと言うと意外そうな顔をしていた。
刃は横研ぎ。砥石の大きさや形の関係で横に研ぐとのこと。
横も斜めもあまりこだわりはないようだ。
そして心行くまで研ぎあげるというよりは、用を成す程度にとどめているように見えた。
家具製作では最後はペーパーをかけて塗装する。

宮大工のように白木に鉋がけで仕上げるわけではないので

自ずと目指すところが異なるのだろう。
無駄にやり過ぎないといった感じがする。

そして「これが次期エース」と言ってもう1本、

まだそんなに使い込んでいない鉋を見せてくださった。
ちゃんと準備している。
「最近は衰えてきていつまで仕事が続けられるか分からない」

と弱気なことをしばしば口にされているが、まだまだやる気なんだなと思った。

続けて2本の鑿を見せていただいた。
一番よく使うという1寸幅のものだ。
一本は相当に使い込んであり、刃が半月のような形になっていた。
実に格好良い。
形もいいのだが、ここまでひとつの道具を使い込んだということも格好良いと思った。
この鑿は数年前に引退して、今はもう一本のほうに代替わりしているらしい。
こちらの鑿も格好良くなるまで使い込まれるんだろうなあ。
穂の部分に面取りのあるものが好みとのこと。

思い入れのある道具は「帽子」。
1970年に訪中した時にデニム生地の「工人帽」というのを購入した。
その後日本では工人帽が手に入らず、

輸入されているいわゆる「人民帽」を使い続けているとのこと。
それにしても1970年の中国と言えば文化大革命の真っ最中。
その当時通常では中国旅行などはできず、

確か中国政府から招待されないと行けなかったと記憶している。
谷さんは大学を辞められた後に行かれたとのことだったが、

人生の転機の時に異国の地を訪れたことは大きな体験だったのだと思う。
うかつにも何故工人帽を使い続けているのかということをお聞きしなかったが、

そういう体験からの思いが大きいのではないだろうか。
(単に使いやすいだけかもしれないが・・・・)

続けて機械場を見せていただいた。
長いこと必要最低限の機械でやってきたが、

最近は少しずついろいろな機械が増えてきているそうだ。
帯鋸、手押し、自動、横切り盤、角のみなど家具屋さん必須のものから

大型のルーター盤やボール盤、ベルトサンダーや、

村上富朗さんのところにあったという旋盤もあり、少し手狭な印象を受けた。
壁際にはいくつもの棚が並びその中には端材がたくさん詰まっている。

樹種別においてあるそうだが詳細は谷さんにしかわからないそうだ。
大事に取っておいた端材を使う場面が来ると嬉しいとのこと。
また、型板や治具なども非常にたくさんあり、長年の仕事量を感じさせる。

面白かったのは、ある器具のスイッチが放っておくと戻ってしまうので、

端材で押さえて黄色いPPバンドで巻いてあったこと。
よく見ると、初めにPPバンドで巻いたがうまくいかなかったので、

その上に端材を当ててもう一度PPバンドで巻きなおしたような感じになっている。
用意周到な谷さんもこんな間に合わせをするんだなと思った。
意外なようでもあり、意外と谷さんらしいとも思った。

あらためて工房全体を見てみると、

掃除が行き届いていてきれいだがけっして神経質な感じはない。
機械場などはどちらかといえば雑然としている。
用意周到で要点はきっちりと押さえるが、それ以外はあまりこだわらないようだ。
なんだか拒絶されない安心感を覚える。
谷さんの作品はもちろん非常に完成度は高いけど、おおらかで茫洋とした感じもする。
それはこういう仕事場から生まれるのだなと理解することができた。

 

 

 

 

谷さんの工房 狐崎ゆう子 記

谷さんの工房は細長い。3×10間を三部屋に仕切って使っている。

豚小屋を建て替えたものだそうだが、古びた板壁にはなんだか風格を感じる。

入り口から順番に谷さんの案内で観ていったのだが、

端の材料置き場まで行き着くのに1時間半。後の予定が詰まっていなければ、

半日かかったかもしれない。
とにかく説明が丁寧。見るもの全てに意味があるのだ。

さて、中に入ろう。
最初の部屋には作業台が4つ。若いスタッフと谷さんのものだ。

ほぼ均等に面積が割り当てられているようだ。

でもやはり谷さんのスペースの道具が一番充実している。

壁には大小の鉋、鋸が並ぶ。焼印の名前付きの物も多い。

民芸家具での修行時代の名残だ。

「私は特に道具にこだわっていません。夜に鉋を眺めて楽しむ趣味もありませんし、

刃を研ぐのもできるだけ早く1~2分くらいで終わらせたいですし・・・」

そうですよね。私も同じ。ちょっと安心。


とは言うものの、気に入った平ガンナは使い込み、

刃もちびてきたので2台目が用意されている。

台が良い南京ガンナは刃を使い切って2枚目。
手工具だけではない。接着剤、サンドペーパー、塗料などに話を向けても、

続々と製品が出てきて、経験談が語られる。

いつの間にか木工相談会。メモを取りつつ質問。
ある意味しっかりこだわりがあるのです。

隣は機械場。元は少ない機械で始めたそうだが、

よく見るとテーブルルーターやベルトサンダー、

昨年亡くなった村上さんの旋盤など、古そうだが種類は割とそろっている。
特注の小さいプレス機もある。市販の合板は突板が薄いので、

ちゃんと削れる合板を自作している。
更に部屋の3分の1くらいを端材の棚が占める。

一番奥の端材を取るには、手前の端材の上によじ登らねばならない。

谷さんがそんな格好をしてるところをちょっと想像。おお、危ない!

この工房では、大型機械をフル稼働するのではなく、

小規模なまま、効率の良い作業ができるように試行錯誤が続けられている。
また、若いスタッフは4年くらいで次々「卒業」して独立。

そんなやり方でもう20年になる。作業場なのに、なんだか研究室のようにも思える。

そんな谷さんのこだわりの道具とは?
なんと作業帽。こだわりなだけあって思い出話も長い。

大学時代、学生運動に熱中しており(本物の団塊世代だ)、

それがきっかけで国交回復前の中国を3週間も旅することができた。

そのときに買った労働者の帽子「工人帽」が1代目。以来何代目になるのか、

ずっとこれを使い続けているのだという。

中国から帰った谷さんは、大学中退となって木工の道に入る。
谷さんの工房には、彼のたどってきた細く長い歴史がつまっている。



●「木の匠」展の中で、気になる人、気に入ったものはありますか?

どんなところが気に入りましたか?

気になる人は槙野さん。うわさは聞いていたものの、この展示会で初めて会った。

本人のキャラクター、作品の全てが面白い、とのこと。
槙野さんは「木の匠」内の人気ナンバー1のようです。

 

 

 

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