揺り椅子


 

揺り椅子・槙野文平|2016

 

 

 

この椅子はどんな意図で作りましたか?――そんな質問はつまらない。能書きは必要ない。まず座って、感じればいいのだ。

 

 

 

好きなのは最高の木を買うこと。昔は新潟との県境に良い木がたくさんあって、山まで行って選んだものだ。

 

30年以上前に製材したトチ。長さ5m、幅1m以上ある。毎年10人がかりでひっくり返して慎重に乾燥させた。ほれぼれするような鎮守の森のナラ。今は手に入らないような木が一生分ある。

 

 

 

木を割って、削るのも好きだ。スピンドルは生木のうちに割っておく。手斧と小刀だけで削るから、太すぎず、でも細すぎないようにしないといけない。それでも削りくずは山のようになる。

 

座面には丸刃の手斧やノミを使う。毎回仕上がりが違っておもしろい。きれいなラインを出したいのに、つい変なところに刃が食い込んでがっかりもする。

 

まったく飽きない。むしろどんどん楽しくなってきた。

 

 

 

背もたれの角度?そりの形? たいしたJIGがあるわけじゃない。勘でやっている。慣れたものだ。揺り椅子だけでも5~60脚は作っているんだから。

 

 

 

笠木とそりはわざと木目が曲がったところを使っている。友人の機械を借りて大まかに切り抜いてから乾かして使う。

 

座板は薄く見えるけれど2寸厚の一枚板。10年乾燥している。割れもなくてすごく良い材だ。座板にはもったいないくらい。

 

肘掛はいつも長め。肘を置くだけじゃなくて、手で握りたいから。それに腕が人より長いからかもね。

 

この椅子は女性用にしようと思って座面を低めにしてある。足が床にちゃんとついて、やさしく揺れるんだ。若い頃には気がつかなかったが年を取ると揺り椅子は心地良い。作るたびに揺れ具合を少し変えてみる。

 

 

 

家具作りを教わったことはない。機械もあまり使わない。そこを気に入ってくれるお客さんがいて、口コミだけで注文が来た。そうして40年以上になる。

 

毎回どこかが揃わないように、違うように意図して作っている。気をつけないと同じようになってしまうから。

 

でも意図なんて表に出しちゃいけない。気取られないようにしたいのだ。ここに書いてあることは忘れて、まずはちょっと座ってみてほしい。

 

 

 

                                 2016.6.17 狐崎

 

 

 

 

 

  揺り椅子・槙野文平

 

   2016年製作|H860×W640×D880|¥330,000(込)

 

   クリ材(長野県大町市産)

 

   オイル着色仕上

 

 

 

槙野さんからのコメント

 

 

 

いつの日にか、自分に与えられた「時」が停止する。

 

それまで木に頼ってあそんでみようと思っている。

 

 

 

槙野文平

 

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