匠たちのリレーコラム #2

「暖かく、脈打つ器で有り得(う)るか」 大場芳郎

  

ここに民藝の指導者である柳宗悦師の訓を書きます。

 

「工人銘抄」

作ヲシテ美シキモノタルベシ

用イラレン為ニ作ルベシ

倦(ウ)ムコトナク作ルベシ

作ルトハ活キル意ナリ

名ヲ成サントテ作ルベカラズ

作ニハ静寂アルベシ

一ツノ作ハ一ツノ公案ト思ウベシ

作ハ懺悔(サンゲ)ナリ

技巧ニ死スベカラズ

手ヲ尊ブベシ

未熟ヲ恐ルベカラズ

作ニ慎シミアルベキナリ

下手ノモノヲ作ルハ常ニヨシ

器ヲ作ルハ自ラヲ作ルナリ

 

 

庭に偶然落ちた漆の種から芽が出て、今、三本30㎝程に成長して、春になり葉を広げんとしています。(実生苗)

山から拾って来たドングリを鉢に蒔くと木に姿を変え、これも近いうちに山に植えて大きくなるのを待ちたいと思っています。

山林について1年間実践学習した仲間と毎年広葉樹を伐採、整備して、日の当たる風通しの良い森作りをささやかながら行っています。

 

「木を見て、山を見ず。」という言葉があります。

斑鳩の棟梁西岡氏のお話を聞く機会が松本であり、ちょうどその時薬師寺の塔を修復しておられるときでした。

もう日本にはかなう檜の大木が少なくなり、台湾まで買付けに行かれ高地の山に入られたとのことでした。

大木が所々に有り、そのまわりの木は枯れてしまっていて、生命力のある木だけが残ったとの話を伺いました。

骨組みを適材適所に組むには現場に行き環境を知ることは不可欠なことでしょう。

一方、杉のこまかな木目の良材を得るには、日の当たりにくい北山に植え枝払いなど手をしっかり入れる、と聞いたことがあります。

 

  成長の遅い高所の寒冷地の方が目のつまった赤身の多い木が育つと思われますが、諏訪地方、特に昔は凍みがきつくて、江戸の木場では諏訪湖の一里四方の木は割れが入りやすく、ひかえた方が良いと伝えられたようです。

 

 

「漆の主成分」

中国、日本 (ウルシオール)

台湾、ベトナム (ラッコ―ル)

タイ、ミヤンマー (チチオール)

 

それぞれ特性があり、乾き方、伸び、肉厚、色合いなど生かした使い方があると思います。

ラッコ―ル、チチオール漆を使った時は、乾きがとても遅いが、肉持ちが有り、早い漆と調合し、一閑張りに塗りました。

強度はウルシオールが有りと感じています。

 

近年古漆器の研究が進み、1、熱分解・質量分析、2、ストロンチウム同位体分析、3,炭素測定などの方法で、年代解析がはっきりわかって来たとの報道が有ります。

中国では揚子江下流域で七千年前。

日本最古の出土品は、北海道垣ノ島B遺跡の装飾品が九千年前。青森県是川中居遺跡で八千年。

 

かつては、西日本が有数の漆の産地でした。

松本市中山地区では50年代に6千本程植林され、今採取可能な木は、細木も含め千本弱になっています。

掻き尽くした後伐採し、萌芽を待ち幼木を育てる。

昨年より、木曽漆器組合が管理しておられます。

私は20年以上わずかずつ大切に掻かせていただいています。

盛夏に手ぐろめで精製し、ほどんど上塗り用として使用。

油分や夾雑物は入らず鮮度も良く、伸び、透けもそこそこに良いので優れた漆になっていると思います。

 

掻き方、くろめ方の技量により、良い、不出来は有ります。

私は量より質に心掛けています。

 

適地、手入れ、研究を重ね、日本の漆の木の植樹をし、増やしていってほしいものです。

 

和漆使用の漆器を多少高くても是非日常にお使い下さり、体感していただきたいと存じます。

 

良心的で良質な、納得のゆく道具を愛用し、ご自分の眼の価値を高め、本物の工芸と一緒に経ていただければ幸いです。

 

                                  2013.5

 

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